農産物の加工品って儲かるの?就農8年目の農家が考えてみました

こんにちは。アロエ農家の杉谷です。
農業をしていると、どうしても規格外のものや取引先で捌けず余ってしまう野菜ができてしまいます。

その多くはスーパーや産直の野菜売り場で格安で販売されていますが、規模が大きくなると産直だけでは売り切ることは難しいですし、産直に規格外の安いものばかり置いてしまうと取引先のスーパーの価格ではお客様に買ってもらえなくなってしまいます。

そこで市場の価格を落とさず新たな販路として考えられるのが加工品です。
業務量にカット野菜にしてみたり、地域ブランドをつかったお菓子やジャム、ドレッシングなどに利用される事が多いです。

今回は加工品販売が果たして儲かるのか?という事を書いてみようと思います。

農家が加工品に取り組む理由

そもそも言ってしまいますと。農業をしている身としては「農産物は青果で売るのが基本」という事は考えてほしいです。

青果として立派な野菜を栽培することができないと加工もクソもありませんからね。
加工用の農産物だからといって適当な農業ができる訳ではないので、まずは青果として売ることを目標に農業を取り組んだ上で加工品に取り組む理由をあげていきます。

規格外の農産物の有効活用

農産物の出荷先は様々ですが、主に市場やJAがメインとなります。今ではネットでの販売も手軽に始めることはできますが年間数トン単位で出荷する農家としてはどうしても市場やJA出荷の比率が大きいのが現実です。

市場やJAですと規格があります、作物の良し悪しはもちろん重量だったり大きさが決まっています。その規格が少し違うだけで価格が大きく変わってしまい。ほとんど箱代と運賃で消えてしまう事も珍しくありません。

そういったお金にならない規格(味は問題ないけど形がおかしかったりサイズが大きかったり小さいものなど)の作物は同じように市場に出すのではなく、カット野菜などの業務用として販売したり粉末にしてお菓子の材料にするなどの活用方法があります。

農産物のブランド力強化

単に規格外の作物を商品にするだけでなく、他の理由もあります。

今では農産物のブランド力を高めることも重要です。農産物のほとんどは美味しくて安いものを求められる世の中ですが、生産量を増やしていくと供給過多になり値崩れをおこしてしまいます。

良くテレビではレタスが豊作で今はお買い得です!などと言われていますが農家からすると労働力はいつも以上!単価は例年以下!なんて事がよくあります。

そんな他地域での作物が多くなっても自分の作物は単価を下げずに売り続ける努力も必要なんです。安ければ黙っていても売れますからね。

果物などに多いですが、1粒数千円のイチゴなど良い例です。そのイチゴ農家さんは決して全てのイチゴをその価格で売っている訳では有りません。

生産した作物の数%、得に一番良いものをブランド化し高価格で販売することで他のイチゴの価格をあげる事ができます。高品質高価格のブランドが定着すると値崩れが起きにくく限られたファンの消費者に売ることができます。

高級スイーツ店で使われた果物だと、それだけでもブランドになりますからね。

収穫期外での商品開発

農産物には旬の時期であったり収穫期は限られています。ですので農家の収入は1年の数ヶ月の期間のみ。なんて事も良くあります。数ヶ月で一年分の売上つくれば良いじゃん!と思われるかもしれませんが、そこまで甘くないのも農業です。先程も言ったように値崩れをおこす可能性もありますので、できれば他の時期も収入がほしい。

もしくは商談をしようにも、商談会などの時期に作物が取れないという事もあるので、その時に営業ができるように保存ができる加工品などをつくっておくのも良いです。

収穫期に冷凍保存や乾燥、粉末などにしておき、お土産品や調味料などの加工品をつくっていつとこも多いです。

加工品の販売が年間を通して安定してくると、従業員を雇っている農家だと農作業意外の仕事をつくることができるので雇用も安定してきます。

農産加工品をOEMで製造する

農産物の加工品をつくろうと思っても自分で加工場をつくるには多くの費用がかかります。オススメするのは今は様々な加工会社がOEMでのオリジナル商品を製造しています。ネットで「OEM ◯◯◯(作りたい商品)」と検索してみるとなんでもあります。

ジャムからドレッシング、清涼飲料水、健康食品まで様々です。

小ロットから製造可能とありますので、だいたい100個くらいから試作はできると考えてもらって良いと思います。容器やラベル代は別ですので商品化するのと試作ではコストは変わってきます。

僕がオススメしたいのは保存の効く加工品です。通常60日〜90日を賞味期限にする加工品が多いので製造してから1ヶ月程度で売りきらないといけません。できれば乾燥、冷凍ができる形態で加工し1年程度は保存がきく状態にしたいです。

はじめから100個の商品が1ヶ月で売り切ることができれば良いですが、そこまで順調にいくとは限りません。

しかも原料がその都度手に入れば良いですがシーズンを過ぎると原料が用意できないとなると意味がありません。まずは原料を保存させ加工品を通年通して生産できるような商品開発が必要かと思います。

自社加工所で農産加工品を製造する

自社加工となると設備に大きな投資が必要となるのでオススメはできませんが、少量の乾燥だったり、カット野菜は可能です。とはいえ包丁とまな板があれば大丈夫という訳ではありませんのであつ程度の投資と労力が必要となります。

一般的なものは漬物やジャムですね。道の駅などで売られているものです。

近所のおばあちゃんが漬けた漬物などは自宅で加工して売られているものが多いです。小さくはじめる事ができる加工品であれば自社加工で取り組むのも有りかと思います。

まずは商品をつくって売る!という事が大事ですのでOEMや設備投資をせずに自宅でできる加工品を売るのはとても良い事かと思います。

農産加工品の販売方法

農作物の加工品が意外に簡単に作ることができます。カット野菜や漬物であれば数万円のパックシーラーを買えば可能ですし、OEM業者に委託してしまえば法定を守った工場で商品が作れます。

ですが一番むずかしいのが加工品の販売方法です。
1番話が早いものは既に青果を下ろしている店舗に営業をすることです。地域のお土産屋だったり道の駅、JAの運営している小売店です。

すでに顔なじみでもあり青果の状態での信頼関係ができているようであれば棚に置いてもらうことも難しくはありません。まずは既に取引をしている店舗に「このような加工品を作ろうと思う!」と相談してみる事が大事です。

しかし地域だけでの販路だと流通量は限られてしまいます。青果に比べて加工品は売れません。ミニトマトであれば1日30袋売ることができる店舗でもトマトのドレッシングを作ったからといって毎日売れるとは限りません。1日1本売れたら良い方。ということもざらです。

加工品を販売するにあたって毎月いくつ製造するのか?目標の売上を考え販路を考えていきましょう。

ネット販売も可能ですが、そもそも知名度の無い商品をネットショップに並べても誰も見ることはありません。店舗やメディアでの宣伝を考えた上で売りに出す必要があります。

1番成功率が高いのは年に数回行われる大規模な商談会に出すことが良いかと思います。全国のスーパーやデパートなどのバイヤーが来る商談会でPRし販路を広げるのは1番効果はあるかと思います。

しかし農産品をつかった加工品は全国に山のようにあります。選んでもらうには更に研究が必要です。価格、デザイン、味、プレゼン力など農業意外のスキルがかなり必要となるのをご理解ください。

農産加工品は儲かるのか?【結論】

ざっくり結論だけを書くと

”儲からない”

要点をまとめてみると

  1. 規格外の農作物をコストをかけずに多く売る
  2. 売れなくても良いのでブランド力、青果の営業力強化に重点を置く
  3. 粉末など保存期間が長いものを原料として利用する

これらの3点であれば、農産加工品に取り組む価値があると考えています。

お金になる順番は①→③→②といった具合でしょうか。

①は業務用としての販路が主になるので、付加価値をつけることは難しいですが一度に多くの取引が可能です。粉末は他の加工品に代用が可能なので売上を大きく伸ばす可能性はあります。

②は運が良ければ売上げアップに繋がりますが、青果の売上と合わせて考える必要があるかと思います。

巷では簡単に6次産業化!加工品をつくろう!など言われますが農産物や加工の特性を考えて展開を考えていった方がよいです。

間違えても「余ったからジャムやアイスつくろー」なんて考えないでくださいね。

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